ニット帽のおっちゃんが上機嫌でこう言っていた。
「俺のおかげで、あいつ車買うゆうてたで。」
高級時計を身にまとった若者が、車を買おうと思っているらしい。
その理由が、ニット帽のおっちゃんにひとくくりでゴミ呼ばわりされたからだと言うのだ。
「サイキンのワカイヤツラはゴミみたいなやつばっかりや!!」
ニット帽のおっちゃんは飲み屋でそう叫んでいたらしい。
みっともないことこの上なく、考えようによっては30代後半のニット帽のおっちゃんも、
自らがもう"ワカイヤツラ"ではないという現実を受け入れたということなのだが、
それはまあ、いい。
ニット帽のおっちゃんの言い分はこうだ。
「サイキンのワカイヤツラはな、金を使わへんのや。
車も買わへんし、旅行にも行かへん。
最近あれや、ワカイヤツラが旅行に行かへんから旅行業界が困ってるって
そこらじゅうに書いてるわ!
そんで何してるかってゆうたらな、貯めとんねん。金を。
あいつもそーやし、あいつもそーや。
みーんな金使わへんやろ?貯めてばーっかしや。
若い頃に金なんか貯めとったやつなんか、ろくなやつにならへんで。
遊びにも行かんくせに金ばっかためておもんない大人になるやろ!?
だからあれや、
サイキンのワカイヤツラはゴミみたいなやつばっかりなんや!」
最後の方は絶叫調だ。
後日、高級時計を身につけた若者にウラを取ってみる。
「え、そんなん関係ないで。
みんなが買わへん今やから、
買ったらおもろいかなと思って。」
「え?金使わんからおもんないっていわれて買うことにしたって?
あー、ぜんぜんちゃうで。それは関係ない。」
なんや、勘違いやないか。
それでも、ニット帽のおっちゃんの言い分はなんか当たってる気がしなくもない。
無茶できるってのはすてきなことだと思うし、
みっともないってのも魅力的。
若い頃だけしか無茶できないのかという点は疑問だけれど、
若い頃のむちゃくちゃさは後で役に立ちそうだ。
おっちゃんみたいに、みっともなくてむちゃくちゃな人間はうらやましいなあ、
と思った俺であった。
それでも、俺は大きな動産を所有するのは大嫌いなので、
車とか、絶対に買わないけど。
そんなことより、
俺はカメラを買う。
KissX2とそのハウジングと、5DMarkIIを買うのだ。


